中高年のTOEIC学習

TOEICと英語力

私が学生だったころ、まだTOEICは今ほどメジャーではなく、いくつもある英語の試験の一つというくらいの位置づけで、文系大学生でも受けたことがある人の方が珍しいくらいの状態でした。そこそこのレベルの学生なら特に対策せずに受けても普通に700~800点は余裕で取れたという、今にして思えば実に牧歌的な古き良き時代でした。

それが今や就活ではほぼ必須みたいな扱いになるなんて、夢にも思いませんでした。

ただ、私個人としては今のTOEICは英語能力の指標としていささか過剰評価されすぎているように感じます

そもそもTOEIC本体はリスニングとリーディングのみで、全ての問題が選択式のマークテストです。ライティングとスピーキングの能力は別に受験しなければならないのですが、実際上世間で評価されているのはリスニング・リーディングのスコアのみという状態になっています。

試験内容も、受験したことのある方はご存知と思いますが、リスニング・リーディングのそれぞれ100問ずつ、合計200問を2時間で回答するという形式で、特にリーディングに関してはまともに問題文をじっくり読むような時間はありません。ハイスコアになればなるほど「いかに速く問題を処理するか」という、事務処理的な能力に近いものが求められます。

巷では「いかに速く読むか」を通り越して「いかに読まずに問題を解くか」に特化したような似非TOEIC対策まで出回ったりしているのですが、それってもはや英語力関係ないような・・・

まあここまでくるといささか極端すぎる話ですが、いずれにしてもTOEICが「ビジネスにおける英語運用能力」の試験であることは確かです。ということはつまり、出題されるテーマも自ずとビジネス関連のものがメインになります。

学生の方はビジネス英語というと何だか大人がすごくハイレベルなことをやってるようなイメージを持たれるかもしれませんが(私はかなり最近までそう思ってましたw)、実際のところビジネスというのは大半が日常のルーティン的なやり取りで成り立っていますので、現場で使われる言い回しやボキャブラリーはそれほど広くありません。

CMやドラマのオフィスで見るようなクリエイティブで意識高い的なやりとりは一般人の日常業務にはほぼ無縁ですし、あっても試験には出題されません

何が言いたいかというと、要はTOEIC対策だけをやっていたのではビジネス以外の場面に必要なボキャブラリーが身に付かないのです。TOEICで800点、900点を取れてもそれだけで映画を字幕なしで見れたり辞書なしでさらさら小説が読めたりするわけではありません。映画や小説の英語を理解するにはまたそれ用のボキャブラリーを構築する必要があります。

特にTOEICのL&Rでは面接試験もないので、ほぼ満点に近いようなスコアを持っていながら日常会話レベルのやりとりもまともにできなかったりするという話もよく聞く話です。いささか都市伝説っぽくもありますが、L&Rに特化した勉強だけしてたらあり得なくもない話だと思います。

私としては総合的な英語力を高めていくためにはTOEICだけでなく、英検など面接形式を含む試験も併用していくことが大事だと思います。

しかしながら、それでも私は特に中高年の社会人学習者の方にTOEICの利用をお勧めしたいと思います。TOEICには(就活以外の)学習的なメリットがあると考えているからです。

TOEICを受験するメリット

私が英語学習の目安にTOEICを勧める理由は主に3つあります。

  1. 気軽に受けられる
  2. 時系列でスコアの変化を確認できる
  3. 安い(←超重要w)

の3点です。

まず1ですが、TOEIC(L&R)は面接がなく、回答もすべて選択式なので、受験する側としての心理的なストレスが少ないです。また結果も合否ではなくスコアで示されるので、この点でもストレスが少ないですし、受験さえすれば何がしかの結果が得られるというのも魅力です。

特に中高年の学習者にとっては面接のある試験は時として別の意味で苦痛を伴います。例えば英検だと級や会場によっては自分以外ほぼ女子学生オンリーみたいなところで待機させられたりしますが、特に私のような中高年の男性にとっては苦行でしかありません。そういうのを割り切って楽しめるようなタイプの人なら大丈夫かもしれませんが・・・

その点、TOEICは受験者層もかなり幅が広く、中高年が受けても全然浮く心配はありません。面接もないので、試験なんて学生時代以来久しぶりという方にとっても気軽に受けられると思います。

当たり前に受け続けている人にはバカらしく思えるかもしれませんが、再出発組にとっては最初のハードルが低いというのはとっても大事な要素です。

そして学習者的にいちばんメリットなのが2で、TOEICのスコアは統計的に処理されており、偏差値と同じくその時その時の試験の難易度には左右されない(とされている)ので、受け続けた結果を時系列で並べて比較することができ、学習の進み具合を一貫した尺度で測ることができます。これは級別に試験の行われる英検などにはない大きなメリットです。

また級別の試験の場合、級と級の間の開きによっては学習のモチベーションの維持が難しくなるというデメリットもあります。例えば英検3級と2級、2級と1級の間には学校教育の学習期間にして3年分くらいの落差があります。これを埋めるために準1級、準2級が設けられましたが、いずれにしても上の級に合格しない限り学習の進歩を実感できないという点は変わりません。TOEICなら多少なりとも力が上がればスコアに反映される(とされている)ので、この面でもメリットがあります。

3点目の「コストの安さ」も地味に大きなメリットです。
面接のある他の試験では比較的安い英検でも1級なら1万円前後、TOEFLやIELTSに至っては2万5千円前後かかりますので、そうそう気軽に何度も受けることはできません。TOEIC(L&R)なら割引なしでも5,725円、1年後のリピート受験なら5,092円で受けられますので、受けるなら毎年同じ月に継続して受験するのがコストパフォーマンス的にもいいと思います。

ただしTOEICは決して万能な尺度ではないということを踏まえて、あくまで学習の目安として活用されるのがいいと思います。

また海外留学などに関してはTOEFLやIELTSなど別の試験のスコアが必須になってきますので、もしそういった計画があるなら最初からそちらの試験を目標にした方がいいでしょう。

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コメント

  1. たにかわ より:

    OEICはすべての受験者が同じ内容の試験を受ける、というのは間違いでは?ある日に行われる公開TOEICでも、いくつかのフォームがあることはよく知られていずはずです。

    • ponsuke ponsuke より:

      ご指摘ありがとうございます。そうなんですね!!勉強になりました。調べてみます。