通訳案内士は「資格」ではありません

 

いやマジでもうこのネタいい加減にしろよ、と思われる方もいるかもですが、身をもって2年間もの学習時間と高額な受験料プラス参考書代をムダに棒に振ったというか振らされた側としては逆恨みもとい、まだまだこの通訳案内士なるゴミ資格について世間の方が誤解・誤認されている部分が多いと感じています。

何より、官庁と利権団体による巧妙な印象操作によって中高年の英語学習者がこの種の「資格のための資格」みたいな欺瞞的資格の勉強に多くの時間と費用を搾取されている現状は許しがたいです。

受験を断念せざるを得なくなった負け犬として、私は今後も「通訳案内士」試験の闇について情報発信を続けるつもりです。

例によって負け犬のワンワン記事ですので、勝ち組有資格者の方、鉄の意思で受験を続けられる方および官庁ほか利権団体関係者の方はブラウザを閉じるなりPCの電源引っこ抜くなりして適当に脱出してくださいましwww

「通訳案内士」は通訳者ではない

そもそもの部分ですが、「通訳案内士」というと普通は「通訳全般ができる人」というイメージを持つのではないでしょうか。少なくとも私は最初そう思ってました。このネーミングの字面から「(外国語ができる)観光ガイド」をイメージするのは困難です。

この辺り意図的に「観光」の部分を出さないようにして、あたかも通訳技能全般が担保される資格であるかのように謳っているようにも見えるのですが、うがちすぎでしょうか?

試験科目と内容を見ればすぐに分かりますが、「通訳案内士」試験がカバーしているのは観光ガイドとしての通訳技能のみです。2次の面接も含め、決して通訳技能一般を担保するような試験内容ではありませんので、一応念のため。

「TOEIC900・英検1級と同等」は真っ赤なウソ

そしてこの試験の最大の売りである「TOEIC900・英検1級と同等の高い語学力」は完全な誇大広告です。

少なくともTOEIC900に関しては2018年から突如引き上げられた1次試験免除基準に過ぎません。それ以前は840点以上で免除されていました。突然基準が変更された経緯は不明ですが、要するに資格のステータスを上げることが目的だと思われます。

実際、免除なしで1次試験を受けてみましたが、歴史・地理の観光知識をからめていてかなりクセのある出題だったものの、過去問を何度かやれば英語力的には英検準1級程度で十分対応できるレベルだと思います。

しかしさすがに英訳・和訳問題まで選択式オンリーで記述式の出題が一切ないのはいくらなんでも運営サボりすぎではと思いました。もし本気で選択式の設問だけで英語力を測るのであれば、TOEICなみとまでいかなくとも問題数を充実させる必要があるはずですが、それだけの厚みがあるとは到底思えない貧弱な試験内容です(リンク先にpdfがあります↓)。

筆記試験過去問題(⼀部)|JNTO(日本政府観光局)
全国通訳案内士試験の筆記試験過去問題(一部)について、筆記試験の配点および出題された文章(一部)を5年分公開しています。皆様の試験学習にご活用ください。

見ていただければ分かると思いますが、とてもじゃないですが英検1級やTOEIC900点とコンパチにできるような内容ではありません。要は「この試験はTOEIC900や英検1級と同等のレベルですよ」と社会的にアピールしたいがための免除基準であって、そもそも実質を備えていないし、その気もないとしか思えません

もちろん結果として1次免除の特典につられたTOEIC900や英検1級合格者が大量に受験してくれることで新規合格者の語学レベルは上がっていると思いますが、それは単に外部のハイレベル層を餌で釣って取り込んだ結果であって、決して通訳案内士試験自体のクオリティが高まっているわけではありませ

この点の因果関係を勘違いすると無意味なオワコン資格に時間とお金を搾り取られることになりますので要注意です。繰り返しますが通訳案内士の勉強をしても英語力は伸びません

使い道のないムダ知識

これも何度も触れた点ですが、この試験の勉強の最大のヤマ場である歴史科目を攻略するには基本的な歴史知識では全く足りません。普通の歴史の教科書にも載っていないそれこそ六勝寺だのいわき市だの(前記事参照)、およそ歴史科目はおろか観光ともつながらないゴミ知識の類まで網羅することを求められますが、こんな知識が実務で役立つ場面を想像することの方が難しいです。

一般的な資格試験であれば、そこで得た知識は100パーセントでなくとも何らかの形で実務に役立つものですが、通訳案内士の受験勉強で得られる知識の大半は実際の現場で生かしようのない「試験のための知識」でしかなく、結局合格しても実務で必要な知識は現場で仕入れるしかありません。

そんな資格に意味があるでしょうか? わたしにはこれ以上この資格にチャレンジする意義は見いだせませんでした。

特に歴史科目に関してはここまで難問奇問珍問を繰り出す理由が分かりませんが、私はおそらく受験者数が低迷している「歴史検定」を免除要件にすることで歴史検定側のテコ入れを図ろうとしているのではないかと邪推しています。

考えすぎかもしれませんが、実際お役所系の人たちってそういう団体とか制度とか利権ポストの維持には異常に長けてたりするんですよね。そんなところで発揮する賢さがあるなら他のところで発揮していただきたいものですが(*´Д`*)

科目免除の設定が変

上の件とも関連しますが、通訳案内士の1次試験には科目免除の規定があり、例えば悪名高い「歴史」に関してはセンター試験の日本史Bで60点以上もしくは歴史検定(日本史)2級以上があれば免除されることになっています。

一見おかしくないようにも見えますが、出題内容はどちらも通訳案内士の「歴史科目」とは似ても似つかない、良くも悪くもごく普通の日本史の試験で、観光に関係あることないことてんこ盛りの通訳案内士の「歴史科目」とコンパチにできるような代物ではありません。

そもそもこんなんでいいなら一次試験で一生懸命観光がらみの歴史知識を詰め込む意味がなくなります。いったい何のための学科試験なのでしょう?

そういえばセンター試験の成績には突如「直近5年のみに限る」という制限がつきましたが、これもやはり中高年層にはなるべく歴史検定を受験させようという運営側の役人魂が透けて見えるように思われてなりません。

あと老婆心ですが、学生さんなどで幸運にもセンター試験の結果を利用できる方は絶対に科目免除で申請してください。まちがっても「歴史科目」をバカ正直に受験しようなんてすると私みたいに何年もの時間とお金を棒に振った揚げ句【以下同文により省略】

結局ただの「名称独占資格」

そして結局のところ、通訳案内士は法改正によって「名称独占資格」となってしまいました。

「名称独占資格」というのはその名のとおり、「名称」の独占だけが許される資格のことで、資格を取らなくてもその業務をすること自体は何ら差支えがなく、ただ資格がないのに「私は通訳案内士です」と名乗ることだけが許されないという、ぶっちゃけ単なる「名ばかり資格」だということです。

通訳案内士の大きなウリの一つとして「語学系唯一の国家資格」ということが言われますが、果たしてこんなものを「国家資格」と呼べるでしょうか?

医師や弁護士、税理士、教員などを例に挙げるまでもなく、普通「資格」といえばその資格がなければ業務に従事できないのが当たり前です(これを「業務独占資格」といいます)。

「医師とさえ名乗らなければ医業を行ってもよい」「教師と名乗らなければ無免許で教員をやっていい」なんて制度設計があり得るでしょうか? もしあったとして、そんなものを「資格」と呼べるでしょうか?

つまり結局のところ、通訳案内士というのは既に「資格」などではなく、英検やTOEICと何ら変わるところのない「能力検定」の1つに過ぎなくなったというのが実態です。

仮に「合格してなければ名乗ってはいけない」というのも資格だというのであれば、英検1級だろうがTOEICのハイスコアだろうが、何ならソロバンでも書道でも同じことのはず。「通訳案内士」だけが特別なわけではありません。

受験するにせよしないにせよ、観〇庁や利権団体の宣伝とは裏腹に「通訳案内士」の制度的位置づけがその程度のものになってしまっていることは事実として知っておくべきだと思います。

しつこく繰り返しますが、「国家資格」などという甘い謳い文句に惑わされてはいけません。その資格で何ができるかこそが資格の価値です。そこを抜きにした資格に価値なんてありません。

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